当財団が設立された昭和62年、日本の社会では国民を震撼させる多くの治安事象が発生していました。暴力団山口組の分裂に伴う大規模な抗争事件、豊田商事による広域多額詐欺事件、散弾銃を使用した朝日新聞阪神支局記者殺傷事件をはじめ、暴走族の交番襲撃事件、少年による殺人事件も世間の耳目を集めていました。
このような社会状況の下、少年の非行防止、覚醒剤等薬物乱用防止、消費者被害防止及び暴力団総合対策等の推進について官・民・学の三者が一体となった組織的、有機的な取り組みが強く求められていました。
こうした時期、広く市民生活の安全と平穏の確保に貢献していくことを目的として、当財団は設立されました。
ちなみに、設立趣意書は、財団設立の目的等について次のように述べています。
【設立趣意書の要旨】
わが国は、治安水準が高く、安全で安定した社会基盤のもとに、今日の社会的、経済的繁栄を築いてまいりました。
しかし、近年の社会、経済情勢の急激な変化により、従来我が国の治安を支えてきた共通の規範意識や倫理感が希薄化し、また、社会の高齢化、高度情報化、国際化等を反映した各種事犯が発生し始めるなど、今後の社会情勢の動向には憂慮すべきものがあると思うのであります。
とりわけ、青少年の非行問題、風俗環境の悪化の問題など市民生活の安全と平穏を確保する上で解決すべき諸問題(以下「安全問題」という。)については、かねてから深い関心を持ち、地域における各種の取り組みに参加してきたところでありますが、これらの取り組みを一層効果的に推進するためには、民間においても、安全問題に関する専門的、科学的な調査研究を積極的に推進し、関係機関・団体等に問題提起を行うとともに、広く国民にその成果の普及を図っていく必要があると思うのであります。
このような観点から、財団法人日工組調査研究財団を設立し、安全問題に関する調査、研究と資料の収集等を組織的に行うとともに、これらの事業を行う団体等に対する助成等の事業を行い、もって公共の安全と秩序の維持に寄与しようとするものであります。